まず、これは故障ではない
BitLockerの回復キーを求められている状態は、機器の故障ではありません。 ドライブは正常で、中身も残っています。鍵がかかっているだけです。
だからこそ、対処は「復旧作業」ではなく「鍵を探すこと」になります。そして、鍵が見つからなければ、原則としてデータは取り出せません。
この点は最初にはっきりさせておきます。BitLockerは暗号化が正しく機能している以上、回復キーなしで中身を読む方法は基本的にありません。 「解除ツール」を名乗るソフトが出回っていますが、暗号として機能しているものを外から破ることはできないと考えてください。
回復キーが求められる典型的な場面
- Windows Updateやファームウェア更新の後、起動時に青い画面でキーを要求される
- マザーボードやTPMの交換・BIOS設定の変更をした後
- 故障したPCからドライブだけを取り出し、他のPCに接続した
- 中古PCを入手した、あるいは家族のPCを引き継いだ
3つ目が、データ復旧の文脈で最も多いパターンです。起動しなくなったPCからHDD/SSDを取り出してデータを救出しようとしたら、暗号化されていて読めない——という状況です(PCが起動しない時、内蔵HDDだけ取り出して読み出す方法)。
回復キーの探し方
Microsoftのサポート情報では、回復キーは次のいずれかに保存されている可能性があるとされています。心当たりのある場所から順に確認してください。
# 1. Microsoftアカウント
BitLockerが最初に有効化されたとき、回復キーはMicrosoftアカウントへ自動的にバックアップされていることがあります。
別の端末から、そのPCで使っていたMicrosoftアカウントにサインインし、デバイス情報から回復キーを確認してください。個人利用のPCでは、これが最も可能性の高い保存先です。
心当たりのあるアカウントが複数ある場合は、すべて確認してください。家族が設定した場合は、そのアカウントの可能性もあります。
# 2. 職場または学校のアカウント
会社や学校から貸与されたPCの場合、組織側のアカウントに保存されていることがあります。別の端末のブラウザから https://aka.ms/aadrecoverykey にアクセスし、職場または学校のアカウントでサインインして、該当デバイスを展開すると回復キーを表示できます。
組織で管理されているPCなら、まず情報システム部門に問い合わせてください。
# 3. 印刷物
BitLockerを有効化した際に回復キーを印刷している場合があります。PCの購入時書類や保証書と一緒に保管されていることがあるので、そのPCに関する書類一式を確認してください。
# 4. USBメモリ内のテキストファイル
回復キーをUSBフラッシュドライブに保存した場合、テキストファイルとして記録されています。 そのUSBメモリを別の端末に接続すれば読み取れます。
見つからない場合
厳しい事実を書きます。Microsoftサポートには、失われたBitLocker回復キーを取得・提供・再作成する機能がありません。
問い合わせても発行してもらえないため、上記の4か所を探し切った時点で、暗号化されたデータの取り出しは事実上不可能という結論になります。
この状態でできることは限られます。
- 暗号化されていない別のドライブやパーティションにデータが残っていないか確認する
- クラウド同期(OneDriveなど)に同じファイルが保存されていないか確認する
- 外付けHDDやUSBメモリなど、別の場所に取ったバックアップを探す
そして、回復キーを探し切るまでは初期化しないでください。 初期化してしまうと、後からキーが出てきても手遅れです。書類の山から数か月後に出てくることは実際にあります。
復旧業者に依頼する前に確認すること
データ復旧業者に相談する場合、暗号化されている旨を最初に伝えてください。
物理的な故障とBitLockerによるロックは、まったく別の問題です。ドライブが物理的に壊れていて、かつ暗号化もされている場合は、まず物理復旧を行い、そのうえで回復キーを使って復号するという順序になります。この場合も回復キーは必要です。
「回復キーなしで解除できます」と断言する業者があれば、その根拠を確認してください。伝えるべき情報の整理は復旧業者に伝えるべきことにまとめています。
今後のために
回復キーは、暗号化しているドライブとは別の場所に保管してください。 同じPC内のテキストファイルに保存しても、そのPCが起動しなくなれば読めません。
- Microsoftアカウントに保存されていることを確認しておく
- 印刷してPCの書類と一緒に保管する
- パスワード管理ツールに記録する
BitLockerは、盗難時に情報を守るための機能です。 正しく機能しているからこそ、持ち主でも鍵がなければ開けられません。鍵の保管まで含めて、この機能を使っていることになります。
バックアップの考え方についてはバックアップは「取っているつもり」が一番危ないを参照してください。
よくある質問
# Q. 回復キーを何度も間違えて入力すると、データは消えますか?
入力の失敗自体でデータが消えることはありません。ただし当てずっぽうの入力に意味はありません。 48桁の数字を推測で当てることは現実的に不可能です。
# Q. パスワードは覚えているのに、なぜ回復キーが必要なのですか?
サインインのパスワードと、BitLockerの回復キーは別物です。ハードウェア構成の変更などがあると、通常の起動フローが使えず回復キーの入力が求められます。
# Q. 家族が亡くなり、PCが開けません。
回復キーの4つの保存先を確認してください。故人のMicrosoftアカウントにアクセスできるかどうかが分かれ目になります。遺品として端末を扱う場合、契約やアカウントの整理も必要になります。
# Q. 暗号化していた覚えがありません。
Windows 11では、条件を満たす端末でデバイスの暗号化が既定で有効になっている場合があります。 意識せずに暗号化されていることは珍しくありません。
