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バックアップは「取っているつもり」が一番危ない|同期・RAID・常時接続の落とし穴

30秒で分かる結論

  • クラウド同期は、削除や暗号化も同期されるためバックアップとしては不完全です
  • 常時接続された外付けHDDやNASは、ランサムウェアに一緒に暗号化される事例があります
  • コピーを3つ・媒体を2種類・うち1つは別の場所(オフライン)が、被害を限定する基本形です

「バックアップは取っていた」のに失う理由


データを失った人の多くは、何もしていなかったわけではありません。何かしらのコピーは持っていたのに、いざというときに使えなかった、というのが実際のところです。


理由は主に3つあります。


落とし穴1:同期はバックアップではない


OneDrive、Google ドライブ、iCloud、Dropbox——これらは同期の仕組みです。


手元のファイルを削除すると、クラウド側でも削除されます。 ファイルが壊れれば、壊れたファイルが同期されます。ランサムウェアに暗号化されれば、暗号化されたファイルが同期されます。


同期は「複数の端末で同じ状態を保つ」ための機能であって、「過去の状態を保存しておく」機能ではありません。「今の状態のコピー」は持っていても、「昨日の状態」は持っていない——これが同期の限界です。


多くのクラウドサービスには、削除したファイルの一時保管や過去バージョンの保持といった機能があります。保持期間には限りがあります。 気づくのが遅れれば復元できません。使っているサービスの保持期間を、一度確認しておいてください。


落とし穴2:常時接続されたバックアップは一緒にやられる


外付けHDDにコピーを取り、そのままUSBで接続し続けている——これが最も一般的な「効かないバックアップ」です。


理由は2つあります。


ランサムウェアは、接続されているドライブも暗号化します。 IPAは、バックアップデータも暗号化されてしまう事例が多数確認されているとして、ネットワークから切り離してオフラインで保存することを推奨しています(ファイルが暗号化されて開けない)。


落雷・過電流・電源トラブルは、つながっている機器を巻き込みます。 本体と外付けが同時に壊れれば、コピーがある意味がありません。


対策は単純です。バックアップを取り終えたら、ケーブルを抜いてください。 これだけで、上記2つのリスクから外れます。


落とし穴3:RAIDはバックアップではない


NASでRAIDを組んでいるから安心、というのは誤解です。


RAIDはディスクが壊れても運用を止めないための仕組みであり、間違って消したファイルは戻りません。 ランサムウェアに暗号化されれば、RAID構成のNASも暗号化されます。RAID全体の障害やコントローラの故障、リビルドの失敗もあります。


詳しくはバックアップとRAIDの違いRAIDのリビルドに失敗したときの対応を参照してください。


基本形:3つ・2種類・1つは別の場所


一般に知られている考え方が「3-2-1」です。


| 数字 | 意味 |

|---|---|

| 3 | データのコピーを合計3つ持つ(オリジナル+バックアップ2つ) |

| 2 | 2種類の異なる媒体に保存する(内蔵ドライブ+外付けHDD、など) |

| 1 | うち1つは別の場所に置く(オフライン保管、遠隔地、クラウド) |


厳密に守れなくても構いません。「今より1段階増やす」だけで、失う確率は大きく下がります。


現実的な最小構成としては、次のようなものです。


  • メインの保存先:PC本体
  • 外付けHDDへの定期コピー:取り終えたらケーブルを抜く
  • クラウド:同期ではなく、重要なファイルだけ別途アップロードしておく

外付けHDDを2台用意して交互に使うという方法も有効です。片方をつないでいる間、もう片方は必ずオフラインになります。


復旧できたデータの扱い


データ復旧に成功した後、復旧したデータを元のドライブに書き戻さないでください。 上書きによって、まだ救出できていない領域が失われます(復旧したデータを同じ媒体へ保存してはいけない理由)。


そして、一度障害を起こしたドライブを再び常用しないでください。 SMARTの値に異常が出ているなら、なおさらです(SMART情報の見方)。


動くかどうかを一度試す


バックアップは「取ること」より「戻せること」が本体です。


IPAも、有事の際にバックアップからリストアできるか、現状のバックアップ方式でリスクを検証することが重要だとしています。


やることは簡単です。バックアップから、ファイルを1つ取り出して開いてみる。 それだけで、次のようなことが分かります。


  • そのバックアップは本当に最新か
  • 想定していたファイルが実際に含まれているか
  • 暗号化やパスワードで開けなくなっていないか
  • 外付けドライブ自体が読めるか

年に一度でも試しておけば、「取っているつもり」で終わることはありません。


よくある質問


# Q. クラウドに入れているので大丈夫ですよね?


同期の場合は不十分です。 削除・破損・暗号化がそのまま反映されます。過去バージョンの保持期間を確認し、重要なファイルは別途コピーを持ってください。


# Q. 外付けHDDはつなぎっぱなしでも問題ないのでは?


ランサムウェアと電源トラブルの両方で巻き込まれます。 バックアップ後にケーブルを抜くだけで、リスクは大きく下がります。


# Q. NASでRAID6を組んでいます。バックアップは不要ですか?


必要です。 RAIDは可用性のための仕組みで、誤削除・暗号化・全体障害には対応できません(RAID6と業務継続)。


# Q. 何をバックアップすればいいか分かりません。


失ったら困るものだけで構いません。 写真、書類、作りかけのデータ。OSやアプリは入れ直せます。全部を対象にしようとすると続きません。


参照した公的情報




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この記事について

トシぼう

ITインフラの運用・監視を本業とするエンジニアです。サーバーやストレージの障害対応を日常的に扱っています。 記事は機器メーカーやOSの公式サポート情報など、確認できる一次情報にもとづいて作成しています。 内容に誤りや古い情報を見つけた場合は、お問い合わせページからご連絡ください。確認の上、修正いたします。