壊れ方が違う
HDDとSSDは、同じ「ストレージ」でも壊れ方がまったく違います。この違いを知らないまま同じ感覚で使うと、備え方を間違えます。
| | HDD | SSD |
|---|---|---|
| 構造 | 円盤とヘッドの機械 | 半導体(可動部なし) |
| 劣化の表れ方 | 異音、動作の遅さ、読み取りエラー | 表面上は正常のまま |
| 壊れ方 | 徐々に悪化することが多い | 突然認識されなくなることがある |
| 衝撃 | 弱い | 強い |
HDDには「カチカチ」「カリカリ」といった異音や、極端な速度低下という前兆があります(HDDから異音がする、HDDのカチカチ音)。気づくきっかけがあるわけです。
SSDにはそれがありません。 可動部がないため音は出ず、動作が徐々に遅くなるとも限りません。昨日まで普通に使えていたものが、今日いきなり認識されない——これがSSDの典型的な壊れ方です。
「壊れる前に気づいて退避する」という戦略が、SSDでは成立しにくいということです。
TBWという指標
SSDには、TBW(Total Bytes Written/総書き込み容量)という耐久性の指標があります。「この容量を書き込むまでは想定した品質を保つ」という、メーカーが公表する数値です。
SSDのフラッシュメモリは、書き込みを繰り返すと劣化します。読み出しではほとんど劣化せず、消耗するのは主に書き込みです。
TBWは製品によって大きく異なります。同じ容量でも、用途(一般向け/高耐久)によって桁が変わることがあります。使っている製品のTBWは、メーカーの製品ページやデータシートで確認できます。
一般的な個人利用であれば、TBWに到達する前に他の理由で買い替えることが多いのも事実です。一方、常時書き込みが発生する用途(監視カメラの録画、大量のログ出力、動画編集の作業領域)では、想定より早く消耗します。
今の状態を確認する
SSDにもSMART情報があり、状態を確認できます(SMART情報の見方)。
SSDで見ておきたい項目は次のようなものです。
- 総書き込み量(Total Host Writes など。TBWと比較する)
- 使用時間
- 代替処理された不良ブロックの数
- メーカーツールが示す「健康状態」「残り寿命」のパーセンテージ
メーカー製の管理ツールを使うのが最も確実です。 主要メーカーは自社SSD向けの状態確認ツールを配布しており、寿命の推定値を表示してくれます。
ただし、SMARTが正常でも突然死は起こりえます。 SMARTは「摩耗の進行」を示すもので、コントローラの故障や電源系のトラブルを予告するものではありません。数値を過信しないでください。
認識しなくなったとき
SSDが突然認識されなくなった場合の対応は、HDDと共通する部分と異なる部分があります。
共通するのは「初期化しない」こと。 Windowsが「フォーマットする必要があります」と表示しても実行しないでください(「フォーマットする必要があります」と表示されたとき、SSDが突然認識されなくなったとき)。
異なるのは、通電の扱いです。 HDDでは異音がある場合に通電を止めるのが鉄則ですが、SSDでは音による判断ができません。認識が不安定な状態で抜き差しや再起動を繰り返すと、コントローラの状態がさらに悪化する場合があります。 数回試して改善しないなら、そこで止めてください。
SSDの物理障害は、HDDより復旧の難易度が高いとされています。データが複数のチップに分散して記録され、コントローラが独自の方式で管理しているためです。重要なデータであれば、早い段階で業者に相談してください(復旧業者に伝えるべきこと、データ復旧の費用相場)。
なお、暗号化されている場合は別の問題が加わります。 Windows 11では条件を満たす端末で暗号化が既定で有効になっていることがあります(BitLockerの回復キーを求められた・紛失した)。
使い方で寿命は変わる
空き容量を残してください。 SSDは書き込み先を分散させて劣化を均一化する仕組み(ウェアレベリング)を持っていますが、空きが少ないと分散の余地が減り、同じ領域への書き込みが集中します。
不要な書き込みを減らす。 大容量ファイルの頻繁な出し入れや、作業用の一時ファイルを大量に書き続ける使い方は消耗を早めます。
発熱を放置しない。 高温はコントローラにもフラッシュメモリにも負担です。ノートPCの排気口を塞がない、外付けSSDを直射日光下や密閉空間に置かない、といった基本で変わります。
ただし、これらはあくまで寿命を延ばす話です。 突然死を防ぐものではありません。
結論:SSDでは備え方が変わる
HDDは前兆で気づける可能性があるので、「異音がしたら退避する」という対応が成り立ちます。
SSDは前兆に頼れないので、バックアップの頻度と方法がそのまま被害の大きさになります。 「壊れてから考える」が通用しません。
具体的な備え方はバックアップは「取っているつもり」が一番危ないにまとめています。同期はバックアップではない、常時接続は一緒にやられる、RAIDは代わりにならない——この3点だけでも押さえてください。
よくある質問
# Q. SSDは何年くらい使えますか?
年数では決まりません。 書き込み量(TBW)と使用環境によります。ほとんど書き込まない用途なら長く使えますし、常時書き込む用途なら数年で消耗します。
# Q. SMARTが「正常」なら安心ですか?
安心はできません。 SMARTは摩耗の進行を示すもので、コントローラの故障や電源系のトラブルは予告しません。突然死はSMARTが正常な状態でも起こります。
# Q. HDDとSSD、どちらでバックアップを取るべきですか?
媒体を分けることのほうが重要です。 同じ種類の機器を2台使うより、異なる媒体・異なる場所に置くほうが、同時に失う確率が下がります。
# Q. 古いSSDを外付けケースに入れて使い続けても大丈夫ですか?
バックアップ用途としては勧めません。 消耗が進んだSSDは、最後の砦にする媒体としては不適切です。取り出し用途に留めてください(HDDスタンドでの読み出し)。