「コピー完了」は書き込み完了ではない
大きなファイルを外付けHDDにコピーして、進捗バーが100%になった。すぐに抜いて大丈夫か。
多くの場合、まだです。
OSは書き込みを効率化するため、データを一度メモリ上に溜めて、まとめて媒体へ書くという処理をします。これが書き込みキャッシュです。
つまり、アプリケーションから見て「書き終わった」状態でも、実際の媒体にはまだ書かれていないことがあります。
この状態で抜くと、次のことが起きます。
- 書き込み途中のファイルが壊れる
- 管理情報(ファイルシステム)が中途半端な状態で残る
- 結果として、そのファイルだけでなくドライブ全体が読めなくなることがある
1つのファイルを諦めればいい、という話にならないのが厄介なところです。
なぜドライブ全体に影響するのか
ファイルシステムは、「どこに何があるか」を記録する管理領域と、データの実体で成り立っています。
書き込みは、この両方を更新します。片方だけが更新された状態で中断されると、整合性が崩れます。
結果として、次のような症状になります。
- 「フォーマットする必要があります」と表示される(「フォーマットする必要があります」と表示されたとき)
- ファイルシステムが「RAW」と表示される(ドライブが「RAW」と表示される)
- ファイル名は見えるが、開くと壊れている(動画ファイルが再生できない・写真が途中で灰色になる)
そして、このとき「フォーマットしますか」に「はい」と答えると、復旧の可能性が大きく下がります。
実務としてどうするか
取り外し操作をしてから抜く。 これに尽きます。
Windows:タスクバーの「ハードウェアを安全に取り外してメディアを取り出す」から対象を選ぶ。
Mac:Finderでドライブを取り出す(イジェクト)操作をする。
この操作が何をしているかというと、保留されている書き込みを完了させ、「もう触っていません」という状態にしてから、取り外してよいと通知しているわけです。
アクセスランプが点滅している間は、まだ書き込んでいます。 取り外し操作をした後も、ランプが消えるまで待ってください。
「取り外せません」と出たとき
無理に抜かないでください。 どこかのアプリケーションがそのドライブを使っています。
- ファイルを開いたままのアプリを閉じる
- そのドライブを開いているエクスプローラー/Finderのウィンドウを閉じる
- ウイルス対策ソフトのスキャンが動いていないか確認する
- 少し待ってから、もう一度試す
それでも外れない場合、PCをシャットダウンしてから抜くのが最も安全です。
書き込みキャッシュの設定
Windowsでは、外付けドライブについて書き込みキャッシュを有効にするかどうかを設定できます。
| 設定 | 特徴 |
|---|---|
| クイック取り外し(既定) | キャッシュを使わない。取り外し操作なしでも比較的安全 だが、速度は落ちる |
| 高パフォーマンス | キャッシュを使う。速いが、取り外し操作が必須 |
既定では「クイック取り外し」になっていることが多いため、「いつも抜いているが問題なかった」という経験につながります。
ただし、これは「壊れない」という保証ではありません。
- 設定が「高パフォーマンス」になっている環境がある
- コピー中・書き込み中であれば、設定に関係なく壊れます
- Macや他のOSでは事情が異なります
「今まで大丈夫だった」を根拠にしないでください。 大きなファイルを扱ったとき、その1回で失われます。
SDカード・USBメモリも同じ
むしろ、こちらのほうが被害が多いかもしれません。
- カメラの録画中・書き込み中にカードを抜く
- 転送中にUSBメモリを抜く
- 電源を切らずにカードを入れ替える
ドライブレコーダーや監視カメラは、常時書き込みをしています。 電源が入ったままカードを抜くのは、書き込み中に抜くのとほぼ同じです(ドライブレコーダーのSDカードエラー)。電源を切ってから抜いてください。
カメラも同様です。 撮影直後、書き込みランプが点いている間は抜かないでください(GoProのSDカードエラー)。
電源トラブルも同じこと
抜かなくても、同じ状態は起こります。
- 停電、ブレーカーが落ちる
- ACアダプタが抜ける、接触不良
- USBケーブルが緩む、給電が不足する(外付けケース・ドッキングステーションの選び方)
- ノートPCのバッテリー切れ
大事なコピー作業をするときは、給電が安定していることを確認してください。 3.5インチのHDDでACアダプタを使っていない、という状態は特に危険です。
壊れてしまったら
フォーマットしないでください。 これが最優先です。
- 異音がしていないか確認する(HDDから異音がする)
- 「ディスクの管理」で状態を見る(読むだけなら安全です)
- 重要なデータなら、そこで止めて業者に相談する
どこまで自力でやってよいかは自力でやっていい範囲はどこまでかにまとめています。中断による論理障害は、物理障害がなければ復旧の余地があります。 余計な操作で潰さないでください。
よくある質問
# Q. いつも取り外し操作なしで抜いていますが、問題ありません。
「クイック取り外し」設定であれば、書き込みが終わっていれば比較的安全です。ただし書き込み中は設定に関係なく壊れます。 習慣にする理由はありません。
# Q. 取り外し操作をすれば、いつ抜いても大丈夫ですか?
操作後、ランプが消えて「取り外せます」と表示されてからにしてください。 操作した瞬間に安全になるわけではありません。
# Q. Macでイジェクトせずに抜くとどうなりますか?
警告が表示され、状況によってはファイルシステムに影響します。イジェクト操作をしてください。
# Q. コピー中に間違って抜いてしまいました。
まず、そのドライブに追加で書き込まないでください。 状態を確認し、重要なデータであれば業者への相談を検討してください(復旧業者に伝えるべきこと)。